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昨日(平成23年3月23日),東京高等裁判所第22民事部(加藤新太郎裁判長)において,旧小淵沢町(現北杜市)官製談合事件の控訴審判決が言い渡された。その内容は,住民が談合があったと主張したすべての工事について談合があったことを認め,北杜市は当時の中山町長及び業者に対し,損害金を入れ約5000万円の支払を請求せよというものである。一審判決に比べると損害額の認定が半減したものの,中山氏の談合への関与を認めたものであり,住民の完全勝訴である。
私は旧小淵沢町の住民を代理し,監査請求を経て,平成18年3月,平成17年度の旧小淵沢町の公共工事において,当時の町長,職員が関与した官製談合があったと主張し,甲府地方裁判所に,小淵沢町(を承継した北杜市)は,談合によって公正な競争によって形成されたであろう落札価格と現実の落札価格の差額である損害を被ったので,これを中山氏と業者に請求せよという住民訴訟を提起した。
甲府地方裁判所は2年以上の審理を経て,平成20年11月,業者間の談合を認め,北杜市は業者に約1億円の支払を請求せよという判決を言い渡した。
この一審判決は優れた内容ではあったが,なぜか当時の町長、職員が。入札参加業者を指名する際に,首謀業者の依頼に従って工事ごとに談合可能な業者の組み合わせを指名したという官製談合の核心部分について事実摘示をせず,判断を脱漏した。
この判決に対し,住民,補助参加人である業者が控訴したが,なぜか北杜市まで控訴した。
控訴審でも2年以上が経過したが,一審ではほとんど主張,立証をしなかった業者が,総力を挙げて,「専門的」かつ業者にしか分からないさまざまな,しかしよくかみ砕けばほとんど意味のない主張立証を繰り広げ,ひたすら訴訟を混乱させて,ノンリケット(真偽不明)の状態に追い込もうとしてきた。控訴審においては,私はひたする問題の所在を論理的に明快にするという作業に従事してきたといってもいいだろう。しかしそのように業者が動けば動くほど,実際に談合があったが故にさまざまなほころびが出てきて,業者や中山氏の傷口を広げていった。このような過程を実見して高裁の裁判官も談合があったことを確信していったのだろうと思う。
どうしようもなかったのは,小淵沢町長の立場を承継した北杜市長である。北杜市長は補助参加人の業者が控訴できるし実際にしたのに,業者の控訴の権利を奪ってはいけないとして自ら控訴したこと,「落札率が95%を超える工事の入札には談合がなされている疑いがある」との一審判決の判断について,北杜市の現在の平均落札率が95%を超えることから,控訴審で「こんな馬鹿な話はない」等として事実誤認であると主張したこと,さらに原判決でも控訴審判決でも中山氏の指示のもとに業者の指名に関与した職員(当時の建設課長)を住民訴訟担当の総務部長に任命したこと,北杜市においては今も95%を超える落札率による落札が続いているのに談合はないという立場で一貫していること,小淵沢町において談合を首謀した業者,これに関与した業者を積極的に入札参加業者に指名し落札させていること,数え上げればきりがない。
北杜市は南アルプス,八ヶ岳を有し,自然の美しさでは日本有数の街である。私も大好きな街である。そこでこのようなことがいつまでも続くことは看過できない。
いずれにせよ,このような過程を経て,冒頭に述べたように住民の完全勝訴と評価できる判決が下されたのである。
(本当の問題)
いずれにせよこの判決は,小淵沢町(現北杜市)に過去に起こった談合についての判断に過ぎない。北杜市長でさえ,今後は自分とは関係ないというスタンスを取るかも知れない。しかし,北杜市の公共工事の入札,落札の現状はひどいままである。このようなことが今後も行われるのであれば,今回の訴訟の遂行過程で学んだことを武器に,積極的に刑事告発,公正取引委員会への申告等を含む他の有効な手段を講じ,少しでも談合を廃絶したい。
しかし,談合はたまたま旧小淵沢町,北杜市で起きている問題ではなく,ひろく蔓延している。今後の地方分権にあたっていつまでもこのようなことが行われているようではまともな地方自治は行われない。これをこっそり許容するのは法治主義ではない。公正な自由競争によるべきでない場面があるとしたら,真正面から随意契約の拡大,その他の工夫を法律,条例によって行うべきであって,首長や業者が犯罪に手を染めるのは悲しい。
特に今回の震災の今後の復興の中で公共工事の比重が大きくなると思われるが,相変わらず首長による業者の不当な指名,談合による高額の入札というようなことが行われるのでは,地方が利権の巣窟になってしまう。それは国民・住民・納税者への背信行為だし,復興そのものを妨げる。
談合の廃絶は,地方分権,地方自治への一歩に過ぎないが,大きな意味を持つ一歩である。
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